ぽろの投資日記【相場コメント】

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経済産業省 経済解析室の『2022年 小売業販売を振り返る』

はじめに

 

経済産業省の経済解析室が発表した『2022年小売業販売を振り返る』を読み、2022年の小売業を現状を確認してみる。

 

www.meti.go.jp

 

 

なお、公式の概説はこちら。

 

www.meti.go.jp

 

以下では資料を読んだ個人的な感想とポイントを延べていきたい。

 

小売業は個人投資家が生活の中で消費者として触れ合う機会が多く、売り場の最前線である店舗を投資家目線で直接観察できるのが特徴である。

月次販売額などを公表している企業も多く、四半期決算を待たず株価変動の機運が訪れる業界でもある。

変化を自身の観察で読み取ることが可能かもしれないと思うと日々の観察にも熱が入るだろう。

 

個人投資家として株式投資を行う上で親しみやすく変化を感じやすい業態といえる。

 

 

 

2022年 主要な業態の商業販売額


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小売業の商業販売額は154兆4020億で前年比+2.6%

 

主要な業態ということで

百貨店、スーパー、コンビニ、家電、ドラッグストア、ホームセンターという分類がある。

投資をやっている人なら各業態で多くの個別銘柄が思い浮かぶだろう。

 

業態ごとの商業販売額の大きさをざっくり頭に入れておくことは、投資していく時に有益だと思われる。

 

百貨店

 


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販売額は5兆5,070億円

 

商品別内訳では「飲食料品」が最大となっている。

百貨店というと高級品を扱うイメージもあるが、それだとめったに行かない場所になってしまう。

毎日洋服や貴金属は買わないが、食事は誰でもするので来店頻度を高める上でも重要だろう。

さっと入れるように地下などにある、いわゆる「デパ地下」と呼ばれる場所で集客の目玉の1つになっている。

 

 

その次が紳士、婦人、子供と分かれるがアパレルといわれる分類。

メンズはどこも高層階にあることが多い。

これは来店する人の性別に合わせてているのだと思う。

良く買ってくれる女性にアクセスしやすい低層の売り場を提供し、たまに来店の男性には高層階までご足労願っているわけだ。

 

 

百貨店は駅近や都心一等地にあることが多く、売り場面積が大きいほどコストも多額となる。

そもそも土地が限られているのが都心なので、各階売り場の拡張余地は限られる。

なので上に伸びることになり高層階になる宿命。

 

この造りは家族で訪れると、買い物する対象者の場所が子供、父親、母親で分断されることになる。

百貨店と対照的な作りになっているのがショッピングモールで、こちらは大体は郊外にある。

敷地面積が大きくとれるので自然と低層になり、対象者や分類の区別が緩やかで混在している。家族全員で回遊できる作りになっている。

大規模な駐車場もあり、車もつかって家族みんなで移動できる。

現代人なら親子で買い物というとショッピングモールの方が便利に思う人は多いだろう。

 

 


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2022年の百貨店販売額は前年比12.3%の増加となった。

店舗数は減少傾向にある中、店舗当たりの販売額が増加している。

 

近年は百貨店業界は地方店の閉鎖やインバウンド消費でニュースになることが多い。

しかし百貨店を新設という話は限られている。

海外観光客はこれからも訪れるかもしれないが、日本人は少子高齢化で消費拡大が望めない。

国内は店舗数という意味では長期減少傾向は避けられないだろう。

 

 

スーパー販売額

 

販売額は15兆1,533億円


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スーパーの商品別内訳は圧倒的に「飲食料品」

市民の自炊はスーパーなくては成り立たない。食料ならコンビニにもあると若いころは思ったが、生鮮食料品に限らず調味料などを見てもコンビニだけだと選択肢が貧弱。簡単な家庭用品などもあるので、地方高齢者などにとっても重要なインフラ。

値段もコンビニ比べて安価である。


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販売額は前年比で小動き。

コロナでは巣ごもり需要という追い風が吹いたが、人々の外出が日常的になると特需はなくなっている。

 

そして最近(2023年5月)のスーパー関連一大ニュース。

イオンがいなげや連結子会社化した。

 

news.yahoo.co.jp

 

 こうした状況のもと、いなげやの背中を押したのは、コロナ後に食品スーパー業界が共通で抱える三重苦だろう。業界では、①物価上昇に伴う価格転嫁の過程で起こる粗利率の低下、②物価上昇、人手不足による人件費高騰、③冷凍冷蔵装置にかかる電気代の高騰、というこれらの減益要因が、巣ごもり需要剥落後の減収傾向とともに発生している。

 

コロナ特需後のあとに物価高、人件費・物流費・電気代高騰とコスト面でのプレッシャーが強まっている。

少子高齢化が進行する地方はもちろん、人口が当面増え続ける首都圏でも各企業の需要の取り合いが激しくなっている。

経営や店舗運営の巧拙が結果に表れ、今後も厳しい競争が続くと見込まれる。

 

 

コンビニエンスストア

販売額は12兆1,996億円


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コンビニといえばやはり食品が大きく、食が充実しているコンビニが強い。

味は好みが分かれる分野だが、個人的にはセブンがダントツで弁当もPB(プライベートブランド)の加工品もセブンで買ってしまう。

1店舗当たりの売上でもずっとセブンが一位で、差が埋まらない。

 

ちなみにコンビニというと大手3社がイメージされるが、地方に行くとローカルな店舗が独自色を出していて非常に面白い。

効率的に全国で拡大となると大手チェーンが有利なのだが、生活圏のニーズにこたえるという意味では地方ではスーパーの小型店舗のようになることも多い。

ローカルコンビニは地方旅の楽しみの1つでもあると思う。

 

ローカルコンビニの世界:2023年2月28日|TBSテレビ:マツコの知らない世界

 

コンビニの王者セブンイレブン(国内小売り最大の売り上げ)は現在ファンドと激しく対決している。

米国でスピードウェイを買収したりで国内コンビニでありつつ、完全にグローバルカンパニーになっている。

しかしヨーカドーの食品開発力を使っていたりと日本的な側面も強い。

 

toyokeizai.net

 

toyokeizai.net

 

どのような結果になるか非常に注目である。

単体の売上だけを見れば百貨店とスーパー事業は足を引っ張っているのは確かだろう。

これから伸びる業態でもない。


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コンビニに関しては食品以外でこんな動きも。

 

toyokeizai.net

 

ファミマはオリジナルブランド、ローソンは無印良品、セブン100円ショップのダイソーの棚を置いている。

この分野はセブンにしては珍しく後塵を拝している印象がある。

 

22年コンビニ販売額は前年比3.8%と意外に上昇していた。

店舗数は減少しているらしいが、店舗当たり販売額が増加した。

都心に人が回帰している流れを反映されたのだろうか。

 

家電大型専門店

販売額は4兆6,844億円


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家電大型専門店の内訳を見ると大分類としては生活家電が一番大きい。

ここは含まれる家電の幅が広いからという気がする。

次に細かい分類で見ると、1番は調理家電だった。

買い替えサイクルが長いものも多いので、意外だったが2022年あたりがサイクルの年に当たったのだろうか。

 

通信家電とかはもっと割合が大きいかと思っていた。

この資料を見て家電業界に関しては、自分の知識や理解があいまいなことに気づかされた。

語れることが少ない。

 

 


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店舗数は増加。

ノジマは小型店を多数出店する戦略なので、店舗数は案外伸びしろがあるのかもしれない。

 

www.nikkei.com

 

しかし在宅勤務は今後も根強く残っていくのだろうか。

だいぶオフィス回帰している企業も多い印象だ。

 

各駅停車しか止まらない駅にあるノジマを調査で覗いてみたのだが、カセットやCDレコーダーの売り場の面積が割合広く感じた。

都心の大型家電販売店とはニーズも異なり、売り場構成もだいぶ変えていそうだ。

 

ドラッグストア

販売額は7兆7,087億円


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ドラッグストアは一般的に「食品などを低価格で集客の目玉にし(薄利多売)、利益率の高い調剤薬局や医薬品の販売を狙う」とされているが、まさにそれを表す商品別内訳になっている。

食品が販売額の3割以上を占めているわけで、ここで競合するスーパーなどは苦々しい思いをしているだろう。

 

駅併設や繁華街では食料品の揃えはコンビニ程度のものだけど、ロードサイドなどは生鮮品の取り扱いもすごい。

カワチ薬品とかクリエイトSDに初めて行ったときは、取り扱いがスーパー並みで感動した。

 

マツキヨなどはオリジナルブランドの化粧水などでも利益率を高める戦略をとっている。

こちらはインバウンドにも強く、ドラッグストアとひとくくりにしても各社の戦略の違いは大きい。

 


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店舗数は4.6%増となっていて意外だった。

これはインバウンドで縮小していた店舗の再出店などが影響しているのだろうか。

全体で5%近い上昇というのは勢いを感じる。

 

ホームセンター

 

販売額は3兆3,420億円

 


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私は車を所有していないので、小売りの中でも観察ができていない業態となっている。

売り場的には広くて大量の商品があるので好きな場所である。

家電や家具もあり生鮮品以外の食料品もあったりする。

ロードサイド沿いにあり近隣に大型スーパーなどがある場合も多いので、自店舗ですべての顧客ニーズを拾わない戦略かもしれない。

 

内訳で一番大きい「DIY用具・素材」を買うならホームセンターが思い浮かぶ。

園芸用品なども充実しているように感じる。

車で買いに来て大量買いをするので販売額も大きくなりそう。

 

私は猫を飼っているが、ペット用品は充実している。

生体販売をしていることもあり、ペット用品を買うのはホームセンターとなっている家庭も多い。

ペットフードなどは値段が安めに販売し集客に使われていると感じる。

またカインズなどはオリジナル品も展開している。

うちも爪とぎのリフィルやペットシーツを買っている。

 


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コロナが蔓延した2020年には、「三密」を避けて郊外のホームセンターが人気となり、マスクやテレワークの家具などで売り上げを大きく伸ばした。

あの頃は株式市場でもモメンタムのある銘柄が多く、決算も強かった。

あの程度の特需は今後なかなか望めないかもしれないと思う。

 

まとめ

2022年の小売業の現状を見てきた。

自分の知っている内容を書いてみたが、あらためて見ると意外な点や発見も多かった。

 

家電とホームセンターは自身で知識が足りないと感じた。

家電は優待だけもって満足という感じで業績の中身を見ていないし、店舗も用事ある時しかいっていない。

ホームセンターは観察機会が圧倒的に少ないのだと思う。

 

スーパーはコンビニとドラッグストアに削られて非常に厳しいように思う。

スーパーもコンビニも持つセブン&アイが海外ファンドにコンビニ切り出しを求められているあたり、スーパーという事業の難しさを象徴しているという感想。

 

百貨店もインバウンド期待で目先は明るく見えるが、長期的には店舗数の減少は避けられないように思う。

店舗閉鎖と新設だと、閉鎖の方が増えていきそうな印象をもっている。

 

今後のエントリーでそれぞれの業界ごとの個別企業も見ていけたらと考えている。